加速矯正
今回の日本矯正歯科学会は新型コロナによりオンデマンドとなりました。
コロナでいいことはあまりなかったのですが、リモートの促進ということだけは、唯一ありがたい変化でした。
オンラインでの参加はすごく楽なのでこれからも続けて欲しいと思っています(若手に移動費と宿泊費は辛いものがある)
さて、矯正治療をしていると、治療を早く終わらせることができないかということは、患者さんからも求められるし、自分達も効率的に治療をしたいと常に求めていることです。
加速矯正とかスピード矯正と検索すれば、外科的方法、超音波振動、レーザー、セルフライゲーションブラケット、デジタル矯正など色々出てきます。
はたまた、セラミック矯正とかいう歯を動かさないのに名前に矯正を入れてしまうなんちゃって即日矯正なんてものもある始末
そんな誰もが渇望する加速矯正とはいかに・・
Darendeliler先生の講演が面白かったのでまとめました(日本語訳が付いていて英語苦手でも話が分かったからというオチ)
加速矯正を語る前に、そもそも歯はなぜ動くのか?
それは骨が吸収するから。
1ヶ月に最大3mm吸収するが、これだけ吸収させるのは普通は難しい・・
加速矯正には2種類の治療がある
・非侵襲性→振動、ソフトレーザー、Photobiomodulation
・侵襲性有り→コルチコトミー、ピエゾシジョン、MOP(Micro-osteoperforations)
侵襲性のあるコルチコトミーは私は行わない。(からデータ無し)
1.振動は歯根に有害か、歯牙移動に有効か?
・Acceledent (30Hertz)
振動は根吸収に有意差なし
歯牙移動量に有意差は出なかった
・Hummingbird (50 Hertz)
振動刺激の方は根吸収が減った
振動を与えた方が15%ほど移動量が大きかった(0.15~0.2mm/1ヶ月)
2.ソフトレーザーが歯根に与える影響は?
骨と歯肉の厚さ1mmごとにレーザーエネルギーは7%減少する
根吸収への影響は有意差なし
犬歯への歯牙移動への影響は、有意差なし
3.photobiomodulation(レーザー?調べてもよく分からなかった)
根吸収に有意差なし
犬歯の歯牙移動に有意差なし
4.RAP(Regiona Acceleratory Phenomemon)の作用は?
Piezocision
歯根吸収が44%が多い
犬歯移動量に有意差なし
Micro-OsteoPerforation(MOP)
歯根吸収が42%多い
犬歯移動量16%(0.16mm/1ヶ月)効果あった
はたして、これらは臨床的意味があるのか?
そもそも、どうして治療が長引くのか
・誤った診断
・誤ったメカニクス
・誤ったブラケットポジション
・調整のアポイントメント間隔が長い
・患者協力
・破折、破損
自分の頭を使って、これらをコントロールすることで加速矯正を行うことが可能である
例)フィニッシング期間に2週間ごとに治療を行うこと
★結論
加速矯正の真実は何か
・補助的な治療で加速矯正を行うことは難しい
・自分の頭を使え
加速矯正はやはりエビデンスを求めていくと補助的な装置や手術で加速させることは難しいように思います
この本の中でも語られているが、基本どの方法もエビデンスレベルは低く、優位な差はでないように思われます
もちろん効果があると言う先生もおられるし、嘘ではないと思うが、誰がやっても効果が出るレベルとまではいかないのでは?と個人的には思っています
ヒューマンエラーを無くして効率的に治療する方が効果が高いのではないか?
そうなると、講演では語られなかったが、AIやデジタル矯正などコンピューターを駆使した矯正治療の時代が期待されるのではないか?(完全に個人的見解)
たいへん為になる素晴らしい講演でした。